緑の廃墟

帰省する途中、車から小学校の敷地らしいものを見た。傷んだ金網の向こうの光景が今も忘れられない。


そこは鬱蒼と草が生い茂り、緑の廃墟になっていた。


地域に住む子どもの数が減り、統廃合した結果、廃校になった小学校だと思った。


草を刈るにも人手がいる。廃校となった校庭の草をわざわざ刈ることはしないのだろう。校舎はよく見えなかったけれど、荒れてあちこちヒビ割れているにちがいない。


田舎には本当に人がいない。
この猛暑で外に出られないというのもあるかもしれないけれど、お盆にお墓参りしたときも、墓地は閑散としていた。以前はもっと多くの人がお墓参りに来ていたように思う。


草や樹々だけが元気だ。とはいえ、この夏は暑すぎて彼らもうんざりしているかもしれない。


緑の廃墟。
人がいなくなった空間は、少しずつ自然に帰っていく。
いつまでも同じ姿ではない。


かつてこの小学校に通っていた人は、この緑を見てどう思うだろう。


子どもの笑い声や駆け回る子どもたちの姿はもうそこにはない。脳内スクリーンに映し出されるのみである。