たどりつく快感。


久しぶりに車の運転をした。
とあるところに用事があったので。
電話で受けた目的地の場所説明を脳内に繰り広げつつ運転。
車内の音楽はKOTOKO。ごきげんなドライブである。


実は地図があっても迷うのが私だ。
オフ会のお店なども場所を調べておいても迷ったりする。近いと思っていたらとんでもなく遠かったり……。


今日の目的の場所は、学生の頃、十数回行ったことがある場所の近くだったので、土地勘はあった。
だから甘く見ていた。
ちがう。景色が違う。あったハズの建物がなくなっていたり、新しい建物が建っていたり、道も整備されていたりして、記憶とちがっていた。
まるで初めてきた街みたいだった。
銀行だけはあいかわらず同じ場所にあったので、ちょっとほっとしたりした。



そうこうするうち迷った。とおりすぎたらしいことだけはわかった。
これはまずいと思って、来た道を戻ることにした。


迷ったと思ったら、とにかく戻るようにしている。
迷ったかもと思いつつ先に先に進んでしまうのは危険だと思う。


少し不安になりながら来た道を戻る。
こういう時にかぎって携帯電話を家に忘れている。先方に電話をして尋ねることもできない。車にナビはついていない。


たぶん、曲がるべき交差点を曲がりそこねている。そう思った。
とにかく曲がるべき交差点まで戻ることにした。


おそらくは曲がりそこねたであろう交差点まで来た。
そう、ここを右に曲がればいい。
右に曲がるとスーパーが見えるはず。
さっきは曲がらずに直進したから目的の場所にたどり着けなかったのだ。


右に曲がる。
あった。スーパーだ。
このスーパーを過ぎて、それからそれから。
私はわくわくしてきた。
ああ、大丈夫。まちがってない。この道でOKだ。


もうすぐもうすぐ。
とおりすぎないよう気をつけながら運転する。
なんとも楽しくなってきた。
電話での場所説明が脳内で再生する。
この先、左手が目的の場所。


あ、あった!
目的の場所の建物が見えてきた。


しかし、また左折すべきところを直進してしまった。
どうして直進してしまったのだろう。
建物は見えていたのに。
脳内では左に曲がることはわかっていたのに。


また来た道を戻る。


そして、やっとたどりついた。
たいした距離でもないのに達成感すら感じてしまった。
うれしいと思った。
この体験はブログのネタになると思った。
タイトルは「たどりつく快感」にしようと思いつつ車を駐車させた。