【創作】三日月と秋の空


ひどく蒸し暑い空気が私の黒いTシャツをまとわりつかせる。重い灰色の雲が空を覆う。ひと雨くるかな? 頭のなかでは傘を持っていこうとしているのだけれど、実際持っていくことはない。安っぽい透明のビニール傘でさえ持っていきたくない。そんな私は出かけると決まって帰りは濡れて帰ってくる。そんな夏も終わりを告げた。


なにかを期待させる夏は嫌いだ。夏だというだけで、みな明るく、なにもかもがはしゃぎすぎている。浮き足立っている。こんな私でさえ、なにかを期待してしまうのだから、まったく夏という季節はうんざりだ。
この夏何があっただろうか。ただただ暑く鬱屈として、ひたすらPC画面に向かっていただけだ。この暑さに耐え切れず、私のノートパソコンは熱暴走した。気がつけば、九月。


両頬に夕暮れの風をうけ、薄紫色の空のその透明感に思わず目を伏せる。目の奥が痛い。私は目を閉じたまま全身全霊で今いる場所を感じる。宇宙から私を見下ろす。地球という惑星の日本という国の隅っこに立っている自分。ふと思う。私は今何をしているんだろうと。前に進もう進もうと気ばかりが焦って、まったく前に進んでいない。日常におわれ埋没し、そうしている自分に苛立っているに他ならない。ああ今日も進まなかった。今日もできなかった、と。


宇宙から見ればちっぽけなひとりの人間。ちっぽけなちっぽけな。そんな自分に一体何ができるというのだろう。変わるためには行動すること、頭ではわかっていても行動できていない。



今日また言葉に出会う。誰かが書いた言葉。今の私に響く言葉。

素直でいなさい。


今もっているものに感謝しなさい。


過去ばかり振り返って、ずっとたちどまっているのですか?


優しい秋の空は澄んでいてどこまでも切ない夢をみているみたいだ。そんな空に浮かぶ淡い三日月に見守られながら深呼吸。


だいじょうぶ。まだ風はあたたかい。ゆっくり歩いていこう。


黄昏時は夢をみるそんな三日月と秋の空。



.fin

追記:id:hebomeganeさんの文章に憧れて、創作してみました(^ω^)