こんな風にして僕は結婚した

田舎に帰りたいと
毎日のように思うようになった


都会では仕事はある
けれど帰りたい


都会はなんでもあるけれど
それも疲れた


静かなところで
のんびりと


休みの日には山にのぼったり
海岸沿いを散歩したり


都会に憧れて出てきたけれど
所詮ひとりなんだということを
確認しただけだった


孤独を覚えた
ひとりきりだという孤独


まわりのやつらは結婚していき
僕は取り残された


どうせひとりなら
ひとりきりなら
もっと孤独へ
もっと静かな場所へ


都会にいれば
求めてしまう
モノも人もあふれすぎて
見てしまうと欲しくなる


それがずっとずっと続く
それに疲れた
それが苦しい


すべてをリセットして
なにもかもリセットして
いちからはじめたい


リセットボタンを
僕は押した


田舎に帰り
仕事を探した


中学のときの同級生が
まだ独身だった
ずっと実家暮らしらしい


同年代くらいの男は
みんな都会に出ていってしまっている
まわりに若い男はいない
それが今まで独身だった理由のようだ


同級生でお互いどんなやつかも知っているので
とにかく気が楽だった


そのうちそいつとつきあうようになって
結婚することになった


仕事は嫁の親父さんの口利きで
見つけることができた
縁故採用というやつだ
給料は安いけれど
雰囲気のいい職場で
文句もない


たまたま運がよかっただけかもしれないが
あの日思い切ってリセットボタンを押して
本当によかったと思う
リセットボタンを押して
人生の流れがいい方向へ
動き出したように思う


うちに帰って
誰かがいるというのはいいもんだと
そう思う


※実話(実際に聞いた話)に基づく創作です。一部脚色してあります。