読むということは、自分の中に世界を構築することである。

「私たちに必要なのは草と水だ。私たちは草と水を求め、季節の移り変わりに合わせて旅をする。私たちは馬や羊と共に生きる。草や水を求めて旅をする。それが、私たちの生き方だ。
 私たちは、自分の生き方を生きる。他人から押しつけられた暮らし方や、時代の流れといった類のものには興味がない。昔からそう生きてきたし、今も、そしてこれからもそう生きてゆくだろう。私たちの国は、私たちの中にあるのだ」

『天山の彼方』(戸井十月それでも世界は美しい』 より)

アメリカのdesert、天山、アンデスイベリア半島、アフリカ、ヌクアショット・・・旅は物語を生成する。生成された物語を読むことでわたしが得るものは大きい。行きたくてもなかなか行けないのが旅。なかなか旅行には行けないけれど、旅行記なら手軽に読むことができる。わたしはよく旅行記を読む。旅物語も好きだ。最近読んだこの本は、24の短編小説と写真集でしばしの旅人気分に浸らせてくれた。
読みながら異国の人々の生活を想像してみたりした。

それでも世界は美しい

それでも世界は美しい


本を読み終え、眠りに着いた。
明け方、夢を見た。
しゃぼん玉が空の青につややかの染まっていた。
木々の濃い陰が大地を描き、雲の白が丸く輪郭を縁取る。
くるくると宙を舞うしゃぼん玉は、まるで地球のようだった。


無数のしゃぼん玉が生命体のように動いていた。
生命体はどれも似ているけれど、少しずつちがっていて、中の世界は似ているようでちがうのだろうと漠然と思った。


しゃぼん玉の、その内部に広がる世界。
そのすべてを見ることは不可能。
人が考えていることすべてが表には出ないように。


自分の物語は、自分の中にあるのだ。
自分の人生は、自分の中にあるのだ。
自分の世界も、自分の中に。
そう思う。


世界を思い描くこと。想像すること。
これほど楽しい作業はない。


読んで、世界を構築する。
完全完璧でなくていい完全自由な世界。
想像することは楽しい。
それゆえ、読むことをやめられない。


本を読みながら、未知の世界にどきどきわくわくしているそんな自分がいる。