東京タワーの思い出

東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (新潮文庫)

東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (新潮文庫)

先日テレビで東京タワーを見た。そして東京タワーにのぼったときのことを思い出した。
東京タワーにのぼったことは2回。
子どもの頃旅行で親に連れられてのぼったのと大人になってからと。
大人になってからのぼったときは夜だった。


東京タワーから見た夜景はきれいすぎてこわいくらいだった。昼間高層ビル群を見たときもすごいと思ったけれど、夜景のほうが私は好きだ。これほどの風景はここでしか見れない。この風景を一言で言い表すのなら、繁栄。いや、栄枯盛衰も書き加えた方がいいかもしれない。繁栄や発展の陰には少なからぬ消滅や消失といったものもあったはずで、失われたものは忘れられていくものだ。忘却の彼方にあるものを見つけることは容易ではない。私の子ども頃の東京タワーの思い出がそうであるように。


私の場合、思い出をふりかえる習慣になく、どこかに記憶を封印しながら目の前のことに夢中になっている。そんな自分を刹那的だとも思うけれど、多分生まれつきの性格がそうなのだと思う。思い出はなくなったわけではない。東京タワーもそう。いつもそこにある。見れば思い出す。それでいい。この考え方も昔から変わっていない。


思い出だけでは生きられない。でも思い出があるから生きられるとも言える。思い出のみに囚われることなく、また思い出をかき捨てることなく、心のどこかにそっと携えつつ、それでいて軽やかに穏やかに日々をすごしていきたいものだ。


東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

東京タワー (新潮文庫)

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