海の見える場所で眠れるとしたら

毎年お盆にはお墓参りをする。
そこは時間が止まった空間だ。
そこからは海が見える。
淡く白くかすむ水平線。
少し高台の視界が開けたその場所は風も心地いい。



夏草と潮のかすかな匂いが鼻をくすぐる。
ぬけるような空は海の青とはまたちがう。
夏の青。
夏草の緑。
木々が夏の日差しに濃い影を落とす。



ここは静かでやさしい。
たくさんの墓。
墓の一群。
昔からずっとずっとそこにあって、たくさんのたくさんの人が眠っている場所。



ふと思う。
帰れる場所があるというのはよいなぁ。
眠れる場所があるというのはよいなぁ、と。



やがて永遠の眠りにつくとして、
いつも海の見える場所で眠れるとしたら、
それはすてきなことだろう。