200個の楕円を塗りつぶすだけの簡単なお仕事

僕は、案外打たれ強い。
そのことは、ある時、よく何かにとり憑かれる先輩から言われて自覚した。
その先輩の母親が巫女体質らしい。御祓いがどうの、という話を先輩はよくしていた。そして、その先輩はよく体調を崩していた。
「いやぁ、今度のはタチ悪くってさぁ、まいったぜー。母親が言うにはJKらしいんだけど、俺にまとわりついてさ、ほら、右肩あたりにいるだろう?」


ぶんぶんぶん!
僕は首をでんでん太鼓のように振った。


僕は巫女体質でも霊感少女でもないので、見えない。というか見たくもない。JKの幽霊なんて。


―――JKの、ぱんつならどうだろう?ちょっと見てみたいか?


JKの、JKの幽霊はぱんつはいているんだろうか。
死んだときにはいていたぱんつを、ずっと今もはきつづけているんだろうか?!!!!



地獄のミサワ絵が脳内再生。
う、ウインクしてやがる!!




あれ?
僕は何を伝えようとしていたのだろう?
幽霊化したJKのぱんつの話がしたくて、このブログを乗っ取ったわけじゃない。



ガリガリ君アイス梨味でも食べながら思い出すことにしよう。



ガリガリうめぇ!!


ああ、思い出した!
そうそう、僕は実は案外打たれ強い、といういう話だったな、そういえば。
打たれ強いというよりむしろ鈍感なだけかもしれないけれど。



打たれ強さ、鈍感力を武器に僕は這い上がってきた。
仲間は次々と脱落していったけれど、僕は前進した。
角度60度はあろうかという坂道も、僕は陸自仕込みのほふく前進で一歩一歩進んだ。


今回のこの試練もどうにかなるだろうと、僕は部屋に迷いこんだ蜂レベルで見ていた。


とりあえず、最後までこのちっぽけな楕円どもを塗りつぶせばいい。
全部で200。
200個の楕円を塗りつぶすだけの簡単な仕事だ。


正答だろうが誤答だろうが、そんなのは気にしない。
当たればラッキー。
はずれればアンラッキー。


なぁに、はずれたって死ぬわけじゃない。
気楽に行こうぜ、気楽に!


というのは小心者に言い聞かせる常套句で、現実は適当に塗りつぶすことを僕のささやかなプライドが許してくれなかった。


一応正解っぽいものを塗りつぶそうぜ!!


猫の足跡よりもささやかな僕のプライド。電子顕微鏡で見たって見ることができないほどのちっぽけな、僕のプライドチキン。


残り40問になったところで、発作が起きた。


しまった!
この発作は!!!


この発作はマジでヤバイ!


ゲ。
死ぬぞ、おい。


マジでヤバイってば。


僕のBカップの鉛筆がぷるぷると揺れた。
すでに先っちょは丸い。丸くつぶれている。


チクショウ・・・なんだって、こんな時に発作なんか!


アレルギーは克服したはずなのに!


発作は突如勃発した。あと残り20%というところで!
この場に滞在できる時間も残り少ない。



脳が文字を見ることを拒絶している。
手を動かし、楕円を塗りつぶすことすら拒否!




おそるべし!




英文長文アレルギー!!!!!



残り40問の楕円を最後まで塗りつぶせたかどうか記憶にない。


この夏の、僕の仕事は終わった。案外打たれ強いはずの僕の・・・。


試験監督のお姉さんの白いシャツ。歩き去っていく背中にブラの線がうっすらと……それだけは記憶に残っている。