少しぼかして(フェイクをいれて)書く。
友人は30代だけれど、今から老後が不安で仕方ないと言っていた。年金もあてにならないし、そもそもその友人は故郷を遠く離れていて、それが寂しくて仕方ないらしい。故郷には両親も姉妹もいて、とても仲がいいそうだ。家族の中で自分だけが離れて暮らしていて、それは仕事があるからなのだけれど、その仕事もいつまで続くかわからず、毎月の家賃や生活費で経済的に余裕もなく、貯金もほとんどないということも言っていた。故郷の家族とSkypeでよく話しているらしく、話すたびに帰りたいと思うのだそう。
仕事を辞めて故郷に帰る。その選択肢もある。友人の故郷は今住んでいるところよりずっと都会で、仕事も探せばあるとのこと。今は賃貸のワンルームマンションに住んでいるけれど実家に住めば家賃もかからないし、お姉さんと妹さんも近くに住んでいるので、いっしょにご飯を食べたり遊びに行ったり、姪っ子や甥っ子と遊んだりもできる。
今はまだ両親の世話や介護は必要ないけれど、いつか必要になるときがくるだろうし、もし家族が病気になったら近くにいてあげたいし、何より仕事を新たに見つけて再出発するなら、少しでも若い方がいいのではないか、と。それに家族と離れて暮らすのは、自分の老後や病気の時不安で、ご両親もお姉さんも妹さんもこんなに離れていては病気のときも助けてあげられない、いざという時はやっぱり家族だよ、と友人に言っているらしい。
今から老後を不安に思うよりは今できること、今頑張れることをやって、そうすることで不安は少しは和らぐのではないかと思うのだけれど、家族については自分の努力だけではいかんともし難いところがある。友人は家族といっしょに暮らしたいと思っている。
自立した大人なら、両親や兄弟姉妹と離れて暮らすことは当然と言われるかもしれないけれど、友人はこれから先もずっとひとりで生きていくことが不安でたまらなくて、精神的にかなりまいっているのは端から見てもよくわかる。よくわかるのだけれど、友人が欲しているのは故郷の家族なので、私としてはどうしようもない。故郷に帰ればあたたかい家族がいる。頼れる、支えてくれる家族がいる。その家族のもとへ帰るのを止めることはできない。ずっと寂しさや不安を抱えたまま今の暮らしを続けるより故郷に帰ったほうがいいかもしれない。
さっきも書いたけれど、新しい仕事で再出発するのなら、やはり少しでも若いほうがいい。今住んでいるところはたまたま縁あって住むことになった地だけれど、そこにずっと住み続けなればならないということはない。変わる自由がある。
友人は故郷に帰るかまだ決められないでいる。しかしながら何かきっかけがあれば、友人は故郷に帰るだろう。故郷に帰って、友人が笑顔になれるなら、楽しく暮らせるのならそれが最良の選択だと思う。「故郷を離れたからこそ故郷の良さがわかった」とは友人は言っていないけれど、離れて良さがあらためてわかるというのはあると思う。故郷でご両親もお姉さんも妹さんも健在で元気に暮らしている。そこに友人が戻る日は、そう遠くないかもしれない。